春山トレーナー・九州一周駅伝帯同記

 「九州一周駅伝大分県チームのトレーナーとして同行してくれないか」と、
塚本和寛杵築東芝陸上部監督兼選手から依頼があったのは、10月末のことでした。
初日の長崎市スタートが11月5日なので、もうすでにレースまで10日前に迫っての突然の依頼でした。
 「九州一周駅伝」とは、長崎をスタートし佐賀、熊本、鹿児島、長崎、大分、福岡と九州を
反時計回りに10日間で一周し、最終日福岡市天神をゴールする総走行距離千キロを越える
世界最長の駅伝レースです。
 突然の依頼でしたが、大変名誉なことと感激し、早急にスケジュールを調整して、レース3日目の
熊本入りから大分県チームに同行することになりました。
 同行前までは、私の仕事は単に「選手一人一人にマッサージすれば良い」という思いがありました。
私の仕事の中心は「それだけなのだ」という意識がありました。 しかしすぐに心境が変わり、
マッサージした選手の走りやレースの結果が気になって仕方なくなりました。同行期間中は、
毎日胃が痛くなるような、祈るような日々で、毎夕食の豪華な食事も口にできないような心境になりました。
 同行してすぐに初めて接する選手たちとのコミュニケーションを大切にし、出走前、
出走後の選手への施術を毎日試行錯誤しながら慎重に行いました。
 同行中、私は延べ40数名の施術をすることになりましたが、選手たちからの訴えのあった疲労や
痛みが起きた箇所を部位別に挙げてみると以下のようになります。(複数回答)

 上記の他に、10日間という長丁場のレースなので、多くの選手が全身的慢性的な疲労を訴えていました。
 毎日7〜8名の施術でしたので、一人の選手への施術時間は長くても40分程でしたが、基本的に
マッサージを全身行いました。上記のように訴えのあった箇所は、オイルやマッサージクリームなどの
滑走剤を使用しましたが、オイルは拭き取りに時間がかかるため、多くは拭き取りが不要の
マッサージクリームを使用しました。
アイシングも私が直接行う時間がなかったし、多くの選手がアイシングセットを持参していたので、
数名の選手に施行前後のアイシングを指示したにすぎませんでした。
 基本的には私は、車で宿舎から宿舎へ移動して、走り終えた選手の帰りを宿舎で待っての
施術という毎日でした。したがってテーピングも要望のあった選手には施しましたが、「出走直前」
ではなく、前の晩の「宿舎でのテーピング」でしたから、効果は半減したかと思います。
(それでもある選手はとても喜んでくれました)
そういう意味でも、トレーナーとしての今回の私の仕事は、マッサージが大半を占めていたと言えます。
 至らなかった点や反省点は、挙げればキリがありませんが、良かった点は、事前にホテル側に
マッサージが出来る「トレーナ室」を確保するように連絡しておいた事でした。
おかげで私の泊まる部屋は、マッサージテーブルが置けるほど充分広かったし、客室が狭い場合は、
会議室やフロアーを準備してくれていました。これは今後も、トレーナーが仕事しやすい環境は、
「選手にとってもプラス」になると思って、ホテル側には遠慮なく要望していこうと思います。
 最終日、後藤総監督の計らいで、半走車に同乗させていただいたのも大きな幸運でした。
毎日のようにマッサージを施した選手たちが力走している姿を目の前で見ていると、
目頭が熱くなるのを何度も覚えました。
今回初めて駅伝競技を目の当たりにして、これは純粋で、素直で、真面目なアスリートでなくては
やってはいけない競技であるとの印象を受けました。そしてこれは、私が大分県チームの選手たちに
接してみて、実際に感じた彼らへの印象でもあります。
 大分県チームは、宮崎の旭化成、福岡のトヨタ九州などの実業団で構成するような、
いわば駅伝の"プロ集団"では決してなく、「杵築東芝」という実業団が主力となってはいるものの、
その多くは学生や公務員で構成する"市民ランナー集団"であると言えるチームなのです。
その中で今回30年ぶりに累計5位に浮上したことは、大変意義のある好成績を収めたと言えるでしょう。
今回の私の同行が、微力ながら選手たちのお役に立てたのであれば幸いですが、
私のトレーナー人生の中で、大変貴重なすばらしい経験をさせて頂きました。
時間的にも体力的にも過密スケジュールでしたが、それ以上の感動や喜びを選手たちは与えてくれました。
今回お声を掛けて頂いた「杵築東芝」の監督や選手の皆さんに心よりお礼申し上げます。
ありがとうございました。